5月15日(月)の朝日新聞「きょうの論点」は禁煙論争です。禁煙派は大阪府立成人病センター調査部長の大島明氏、反禁煙派は東大非常勤講師の小谷野敦さんです。小谷野さんは思い切った発言で何かと物議を醸すので御存じの方はいらっしゃるでしょう。
大島さんは「辞めぬ人は自覚がないだけ」と断じています。一方、小谷野さんは「(禁煙治療への)保険適用は偏見を強める」と警告します。
私は自稿「理解できないなぁ」でタバコ有害論への疑問を提起しました。あの稿で私は副流煙問題、受動喫煙論には触れませんでした。あまりにバカバカしい話だからです。煙が嫌い、臭いが嫌いと言うのは理解できますが、間接殺人とまで言われると笑ってしまいます。小谷野さんも「公共空間における健康への害を言うなら『走る兇器』でもある車はどうなのか。排ガスはよくてたばこの煙はいけない、というのはおかしい」と指摘しています。私もまったく同じ問題意識を持っています。排ガスは有害ではないことを証明してからタバコの害を主張して欲しいのです。
大島さんは「禁煙治療の効果については、既に多くの実証例がある」とは書いていますが、どこにどれだけの実証例があるのか、数値はまったく示されません。だから私のような経済屋は「禁煙派」を信用しないのです。成人の会話にならないからです。
「厚生労働省研究班の調査では、喫煙による健康被害で過剰にかかる医療費は1兆3千億円に達している」とは書いてありますが、であれば「喫煙による健康被害」の疾患名ぐらいは数例でもいいから具体的に記すべきだと私は思います。このような具体性に欠ける説明では金融商工業などのビジネスに従事する一般人にはまったく相手にされないでしょう。
説得力のある数字を示さないことに加え、禁煙派の人々の多くに共通するのは「喫煙者は全員タバコを止めたがっている」という思い込みです。その思い込みがそれらの人々に高圧的で威嚇とも言えるような態度を取らせ、あるいは逆に友情愛情の押売に走らせるのだと私は思っています。これだけの包囲網のなかで喫煙を楽しんでいる人達は「タバコを止めたがって」はいないのです。
酒を飲んで車を運転すれば人を殺します。しかしタバコを一度に10本吸って車を運転しても人を轢き殺すことはないのです。酒に酔って人を刺殺あるいは撲殺する事件は後を絶ちませんが、タバコを吸いすぎて暴力をふるう人はいません。
ポイ捨てや人混みでの歩きタバコは健康被害とは別な問題です。そういう行儀の悪い連中は愛煙家にとっても嫌煙派にとっても敵であり、私は彼らの駆逐に積極的に関わっています。私自身、人混みで火傷を負ったことがあります。だから積極的なのです。なぜか、諸統計で示される喫煙者の男女比に反して、彼らのなかでは若い女性が相当数を占めるのですが…
そういう連中を「禁煙ファシズム」(小谷野さん)勢力拡大のプロパガンダに使うのは、それこそ卑怯でしょう。